大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)1924号 判決

一 そこで、まず本件爆弾が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたるとした原判決の判断の当否について検討してみるのに、本件爆弾の構造について原判決が認定説示しているところは、その挙示にかかる証拠を総合することによつて十分肯認することができるものと考えられる。すなわち、欠陥があつたとして所論が問題にしている起爆装置は、本来爆発物そのものではなく、爆発物を使用する場合に、その使用に供すべき器具に過ぎないものであるから、本件爆弾が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたるかどうかを判断する上では、これに装着すべき起爆装置の性能はもとより、本件爆弾に起爆装置が装備されていたかどうかさえも問題にならないのであつて、仮りに、本件起爆装置に所論のような欠陥があつたからといつて、そのことによつて直ちに本件爆弾が爆発物取締罰則にいう爆発物にあたらないということにはならないのである。

二 所論は、原判決が被告人らの原判決判示第二の行為が爆発物の使用にあたるかどうかを判断するに当たつて、本件犯行当時、共犯者の市川はもとより、被告人も、原判決判示の方法により起爆装置が有効に作動し、本件爆弾が確実に爆発するに至ると考えていたことが明らかであり、また一般人においてもそのように信じるのが当然であると認められる状況にあつたことを考慮に加えている点を捉えて論難するが、爆発物取締罰則一条にいう爆発物の使用、すなわち、爆発の可能性を有する物件を爆発すべき状態におくことに該当するかどうかについては、単に物理的な爆発可能性の観点のみから判断されるべきではなく、同条の立法趣旨、罪質及び保護法益を考慮しつつ、本件爆弾の構造上及び性質上の危険性と被告人らの行為の危険性の両面から、法的な意味において、右構成要件を実現する危険性があつたと評価できるかどうかが判断されるべきものと解されるから、右の点の判断に当たつて、被告人、共犯者及び一般人の認識の状況にまで考察を及ぼすことはむしろ必要な事がらというべきであつて、所論がこれを目して主観的要素に偏した不当な判断と非難するのはあたらない。

以上のとおり、原判決が被告人らの原判決判示第二の行為が爆発物取締罰則一条にいう爆発物の使用にあたる旨説示しているところを論難する所論は、いずれも理由がなく、原判決が、その挙示する証拠によつて、本件爆弾は起爆装置の一部をなすスポイト内の硫酸がスポイト上部を開口することによりビニール管を通つて起爆薬に到達し、その燃焼により本体の爆薬を爆発させる構造のものであつたこと、そして、本件爆弾が爆発しなかつたのは、右スポイト上部を完全に開口しないまま設置したという操作上の過誤によるが、その場合にもなお爆発の危険性が全くなかつたとはいえないこと、また、右起爆装置には、スポイト内の硫酸の移動が抑制される欠陥のあつた可能性を否定しえないが、仮りにそのような欠陥があつたとしても、右は本件爆弾の基本構造に関するものではなく、爆発物を使用するためにその本体に付属している装置に関するものであるうえに、かかる欠陥を伴つたままの状態においても、起爆装置の作動する余地がなかつたとはいえないこと及び本件犯行当時、被告人は、原判決判示第二の行為によつて起爆装置が有効に作動し、本件爆弾が確実に爆発するに至ると考えており、一般人においてもそのように信ずるのが当然であると認められる状況にあつたこと等の諸点を認定し、これらを前提にして、被告人らが、本件爆弾の起爆装置の一部をなすスポイト上部に穴を開けるべく点火したマツチ棒の先端を右スポイトの頭部に押しつけたうえ、本件爆弾を多数の乗降客がある西武池袋線椎名町駅のプラツトホームに面した原判決判示の金網に設置した行為をもつて、たまたま右爆弾が爆発はしなかつたものの、一般的に治安を妨げ、又は犯人以外の人の身体若しくは財産を害するおそれのある状況の下において、爆発物を爆発すべき状態においたものであるとして、爆発物取締罰則一条にいう「爆発物ヲ使用シタル者」にあたると判断したのは正当であり、その判断に誤りがあるとする論旨は理由がない。

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